産業ソーシャルワークとは

産業ソーシャルワーカーとは、働く個人が抱える問題に向き合い、さまざまな関係者と連携しながら、解決のための行動の第1歩を踏み出すまで伴走する相談の専門家です。働く人々のワークライフに貢献し、企業の生産性向上にも寄与するもので、企業に所属するか、もしくは契約を結ぶ形で、個人の相談にあたります。

アメリカにおいては古くから産業ソーシャルワーカー(industrial social worker)という専門家が活躍してきましたが、日本ではいまだに産業ソーシャルワーカーとしては認知されてはいませんし、機能しているとも言えません。

一方で、メンタルヘルスの問題は企業課題としてますます重要になり、過労死という最悪の事態に至るケースも出てきています。働く人の中でおよそ1割程度は高ストレスを抱えながら仕事をしていると考えられますが、適切に対処する方法は確立されておらず、業務の生産性を下げ、離職や発病にいたるケースも多くみられます。また、出産後も仕事をつづける女性や、親の介護に直面する人も増えてきたことで、仕事の悩みとプライベートの悩みを複雑に抱える人が多くなってきています。

私たち産業ソーシャルワーカーは、このような課題に対して、最悪の事態に至る前の「予防的」段階で、役割を果たそうと考えています。


 

産業ソーシャルワーカーの定義

産業ソーシャルワーカーは、働く個人が抱える多様で複雑問題に向き合い、関係者連携しながら解決に導いていくことでトラブルを未然に防ぎ、一人ひとりの仕事と生活の調和を実現し、企業の生産性向上に寄与する専門家です。

 

言葉の意味 働く個人 雇用されている人に限らず、経営者や自営業も含めた全ての働く人を対象とする。産業ソーシャルワーカーは働く個人への支援を主体とする。
多様で複雑 個人が抱える悩みはプライベートから仕事まで幅広く、幾つもの要因が複雑に絡み合っている。表出している悩みが必ずしも本質的な問題とは限らない。
問題 働く個人が抱える問題はプライベートの問題だけでなく仕事のことも含まれる。例えば、病気やストレス、育児や介護の問題、金銭問題、公私における人間関係、職業キャリアに関することなどを指す。
向き合う 困難を抱えて働く個人に寄り添うとともに、困難を解決する道を日常的に研究し続ける。
関係者 産業ソーシャルワーカー相互および産業医等の関係する専門職に加え、企業内の経営者、管理職、人事を含む。
連携 関係者間の話し合いや必要に応じた専門性の高い分野への接続を通じ、相乗効果による質の高い対応を可能とする。
解決 話しを聞くだけでなく、問題を軽減していくための方法を提示し考え方や行動の変容につなげていく。
トラブルを未然に防ぐ 早期からの介入により、メンタル疾患発症や離職、事件事故などのトラブルへの予防効果を高める。
仕事と生活の調和 いわゆるワーク·ライフ·バランス。やりがいや充実感を持ち仕事上の責任を果たしながら個人の時間を持てる健康で豊かな生活を指す。
企業の生産性向上に寄与 産業ソーシャルワーカーは経済的命題を持つ。働く個人の困難解決には企業のコミットが不可欠であり、生産性向上に貢献することで企業と契約し個人への支援をする。

 

主な活動

働く個人に対する価値

  • ワークライフに関わる様々な問題を解決しストレスを軽減させる
  • 仕事の継続
  • 生き生きと働くことや活躍へのモチベーション向上

 

企業に対する価値

  • 生産性の向上(アブセンティズム、プレゼンティズム予防)
  • メンタル疾患発症予防
  • 事件や事故の予防
  • 離職予防
  • マネジャー支援

 


 

産業ソーシャルワーカーの活動戦略

産業ソーシャルワーカーの価値を世の中に広めていくためには、多くの企業に参入し様々な従業員に対応をしていくことが求められます。産業ソーシャルワーカー協会では、その足掛かりとして「メール相談」を相談技能の柱に据えていきます。

新しい活動を普及させていくには社会のニーズに合った効果が求められますが、下記に示したようにメール相談は、相談者、ソーシャルワーカー自身、企業などのニーズに合致する様々な要素があります。ソーシャルワークの相談理論をベースとしながら、メール相談という新たな技法のノウハウを蓄積し研究・実践していくことにより、これまでにない価値を創出できると考えています。

相談者にいつでもどこからでも敷居の低い相談環境を提供 相談者に匿名性、相談する前の頭の整理などを提供
相談者に数字や文字による正確な解決情報を提供 テキストの蓄積によるディープラーニング(AIなど)の提供
ソーシャルワーカーに副業を提供 ソーシャルワーカーに在宅ワークを提供
複数の専門家による組織相談を提供 企業にローコストサービスを提供