マネジャーの負荷を軽減する産業ソーシャルワーカー
リクルートワークス研究所所長
大久保幸夫
ダイバーシティ経営、働き方改革。これらの取組を進めるうえで課題となるのが現場のマネジメントです。
多様な人々を活躍させるのはマネジャーの仕事。育児と仕事を両立しようという女性や、親の介護と仕事を両立させたいと考えるミドルなど、個々に抱える制約条件も異なるため、それぞれの状況に配慮して、ときにはアドバイスもしなければなりません。働き方改革によって、仕事を無駄なくアサインして、生産性を上げ、残業をせずに帰れるようにすることもマネジャーの仕事。ときにはテレワークによって目の前に部下がいないこともあり、そのなかでも業績を上げ続けるマネジメントを期待されています。
古い時代と現在とではマネジャーに期待されるものは大きく変わりました。まずマネジメント以外にプレイヤーとして個人業績を上げることを求められるようになりました。いまや課長職の8割がプレイングマネジャーです。またメンタルヘルスへの対応やコンプライアンスへの対応などの新しい役割が追加され、人材育成や業績推進は以前よりも要望される水準が高くなっています。しかもパワハラと思われないように丁寧にマネジメントしなければなりません。
現場のマネジャーたちはこれらの期待にうまく応えられているのでしょうか。残念ながら答えはNOだと思います。マネジメントスキルの強化を人事課題に掲げて、研修プログラムを充実させる企業もありますが、もともと過剰負荷のなかでのことですから、簡単ではありません。
そこでひとつの解決策として登場したのが「産業ソーシャルワーカー」なのです。ワークライフに関する多様な課題を抱えた部下のマネジメントは、精神的にも大きな負荷がかかるものです。その部分を社員から直接相談を受ける形で解決してくれます。併せて悩めるマネジャーからの相談に応じることで、マネジャー支援の有力な方法となっています。
これまで人事・労働分野での新しい取組みは、すべてマネジャーの負荷を高めるものでしたが、産業ソーシャルワーカーは逆にマネジャーの負荷を軽減します。ここに魅力があります。
組織として産業ソーシャルワーカーを活用することをぜひお勧めしたいと思います。
また、資格検定3級にあたる産業ソーシャルワークの基礎を学べば、人事や現場のマネジメントの助けになるでしょう。プロの産業ソーシャルワーカーになるには、相談・援助の経験に基づく高度なスキルと、ワークライフ全般に関する広範な専門知識が必要ですが、3級では相談・援助のスキルをどなたでも簡単に学習できます。
日本ではまだはじまったばかりの活動ですが、ワークライフの充実を求める個人と、活力ある組織をつくりたい企業と、双方に貢献してくれるものになるに違いありません。